子どもには、失敗に強くなってほしい。

この願いは、とても自然です。

テストで思うようにいかない時。

友だちとの関係で落ち込んだ時。

習い事でうまくできなかった時。

そういう場面で、必要以上に自分を責めず、また前に進める子でいてほしい。

多くの保護者がそう思っています。

ただ、ここで誤解しやすいのは、失敗に強い子を `まったくへこまない子` と考えてしまうことです。

実際には、へこむこと自体は自然です。

悔しい、恥ずかしい、悲しい。

そうした気持ちが起きるのはおかしくありません。

大切なのは、その感情が起きないことではなく、そこからどう立て直せるかです。

近年のシステマティックレビューとメタ分析でも、子どもや若者のレジリエンスを高める介入には一定の効果が示されています。

2022年のレビューでは、子ども・青年向けのレジリエンス促進プログラムに全体として有効性が見られました。

また 2025 年の学校ベース介入のメタ分析でも、レジリエンス促進はストレスへの対処を支える可能性が示されています。

ここから言えるのは、失敗やストレスに向き合う力は、気質だけで決まるものではなく、育ちうる面があるということです。

さらに、感情調整そのものを支える心理社会的介入のメタ分析でも、子ども・若者の emotion regulation を改善する中程度の効果が報告されています。

失敗に強い子を育てたい時、ただ根性をつけるより、感情をどう扱うかを支える方が筋がよいのはこのためです。

失敗に強い子の見方

失敗に強い子は、失敗を何とも思わない子ではありません。

悔しがることができる。

でも、それで全部が終わらない。

ここが大切です

たとえば、テストで悪い点を取った時に泣いてしまっても、そのあとで「どこが分からなかったか」を見直せるなら、それは十分に強さです。

試合で負けて落ち込んでも、次に何を練習するかを考えられるなら、それも強さです。

失敗に強いとは、感情を消すことではなく、感情のあとに行動が残ることだと言えます。

家庭で大切にしたいこと

  1. 失敗した直後に、人格評価をしない
  2. 先に気持ちを受け止め、そのあとで次を考える
  3. 「ダメだった」ではなく、「どこで止まったか」を見る
  4. うまくいかなかった経験を、次の作戦に変える

特に避けたいのは、失敗した直後に「なんでこんなこともできないの」と言ってしまうことです。

この言葉は、出来事の失敗を、その子自身の価値の問題に変えやすいです。

すると子どもは、失敗から学ぶより、失敗を隠したくなります。

反対に、「悔しかったね」「うまくいかなくて嫌だったね」と先に気持ちを受け止めると、子どもは少し落ち着きやすくなります。

そのうえで、「どこが難しかった?」「次は何を変えようか」と進める方が、失敗は経験として残りやすいです。

また、失敗の経験を `一回の結論` にしないことも重要です

「算数が苦手な子だ」
「本番に弱い子だ」

と早く決めると、子ども自身もその見方を取り込みやすくなります。

失敗は、子どもを説明するラベルではなく、やり方を調整する材料として扱った方が健やかです。

自己批判の強さも見逃せません。

青年期の研究ではありますが、self-compassion と心理的 distress の間には大きな負の関連が報告されています。

年齢が上がるほど、子どもが自分に向ける言葉は大事になります。

だから家庭でも、失敗した時に `自分にひどい言葉を向けなくてよい` という感覚を育てることには意味があります。

PikaLab のような環境が役立つのも、失敗を `終わり` ではなく `試行錯誤の一部` にしやすいからです。

色を混ぜる、分数を試す、タイピングでミスする、またやってみる。

小さな失敗とやり直しを安全に経験できる場所は、立て直す力の練習場になります。

失敗に強い子は、打たれ強さだけで育つわけではありません。

失敗しても関係が切れないこと。

感情のあとに次の一歩があること。

そうした経験が積み重なる中で、少しずつ育っていきます。

だから家庭で本当に大切なのは、失敗を減らすことだけでなく、失敗のあとをどう支えるかだと思います。

参考にした研究・資料

・Dray, J. et al. (2022). Resilience Programs for Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-Analysis.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34880812/

・Liu, Y. et al. (2025). School-based interventions for resilience in children and adolescents: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40458775/

・Van Borkulo, C. D. et al. (2024). Effect of Psychosocial Interventions on Children and Youth Emotion Regulation: A Meta-Analysis.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38717667/

・Marsh, I. C. et al. (2018). Self-compassion and Psychological Distress in Adolescents-a Meta-analysis.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30100930/

参考にした研究・資料

・Robson, D. A., Allen, M. S., & Howard, S. J. (2020). Self-regulation in childhood as a predictor of future outcomes: A meta-analytic review.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31904248/

・Durlak, J. A. et al. (2011). The impact of enhancing students' social and emotional learning: a meta-analysis of school-based universal interventions.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21291449/

・文部科学省「資料3 言語力の育成に関して予めいただいた意見及び第1回会議における主な意見(概要)」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/036/shiryo/attach/1399636.htm