朝の慌ただしい時間、登校の準備が進まない子どもが玄関でポツリとつぶやく。

「……学校、行きたくない」。

ランドセルを背負ったまま、床にうずくまって動かない。

仕事の時間も迫る中、親の頭の中は真っ白になり、激しい焦りが襲ってきます。

「どうしたの? 誰かに何か言われたの?」「とりあえず行くだけ行ってみようよ!」。

矢継ぎ早に質問したり、無理に背中を押したりして、結局子どもが大泣きして動けなくなってしまう。

多くの保護者が直面するこの「登校しぶり」の瞬間、大人はどう声をかければいいのか途方に暮れてしまいます。

学校臨床心理学の研究から見ると、この朝の緊迫した場面において、親の「最初のひと声」にはとても大切な鉄則があります。

「理由を問い詰める」のが逆効果になる理由

子どもが「行きたくない」と言ったとき、大人が真っ先に知りたいのは「なぜ行きたくないのか(理由)」です。

いじめなのか、勉強の遅れなのか、先生が怖いのか。原因が分からなければ解決できないと思うからです。

しかし、小児精神医学者のクリストファー・カーニー(Christopher Kearney)らの登校回避行動に関する研究(2008年)によれば、登校しぶりの初期段階にある子どもの多くは、「自分でもなぜこんなに不安で苦しいのか、言葉で説明できない」状態にあります。

「なんとなく胸がざわざわする」「お腹が痛い」「体が鉛のように重い」。

言葉にならない不快感と不安に圧倒されている子どもに、「なんで?」「何があったの?」と問い詰めることは、答えられないテストを突きつけるようなもので、子どもをさらに追い詰めてしまいます。

最初のひと声は「オウム返し」と「身体の心配」

朝の混乱を和らげるための最も安全な第一声は、理由を聞くことでも励ますことでもなく、子どもの言葉をそのまま受け止めることです。

「そっか、学校行きたくないんだね」。

ただ、子どもの言葉を否定も肯定もせず、鏡のようにオウム返しにしてあげる。

それだけで子どもは、「言っても怒られなかった」「受け止めてもらえた」と胸をなでおろします。

そして次に、「お腹痛い?」「頭が重い?」「眠れなかった?」と、身体の感覚に意識を向けてあげます。

「行きたくない」という心の不安は、多くの場合、腹痛や頭痛、だるさといった身体の症状として表れます。

身体の心配をしてあげることで、子どもは責められているのではなく守られていると感じることができます。

家庭が「最後の安全基地」であること

文部科学省の不登校支援に関するガイドラインでも、早期に無理に登校を迫るのではなく、子どもの休養の必要性を認め、家庭を安心して過ごせる「安全基地」に保つことの重要性が強調されています。

学校は、集団生活や評価のプレッシャーが渦巻く、子どもにとって非常にエネルギーを使う場所です。

もし心のバッテリーが切れて動けなくなっているなら、一度立ち止まって充電する時間が必要です。

「今日1日休んだからといって、人生が崩れるわけではない」。

親の側にその覚悟とどっしりとした余白があるだけで、子どもの張り詰めた緊張の糸はふっと緩みます。

家庭で持ちたい見方

  1. 「なんで?」と理由を問い詰めず、「行きたくないんだね」と言葉をそのまま受け止める
  2. 心の問題と決めつけず、「お腹痛いかな」と身体の不調に寄り添う
  3. 無理に背中を押さず、一度ランドセルを下ろして温かいお茶を飲ませる
  4. 学校の先生には「朝から体調と不安が強く、本人の様子を見ています」と事実を伝える

「学校に行きたくない」と言えたことは、子どもが限界をひとりで抱え込まず、親に助けを求められた証拠です。

それは決して後退ではなく、子どもの心を守るための大切な第一歩です。

PikaLab のツールも、学校の勉強についていけない子どもたちが、家で自分のペースで「学ぶ楽しさ」を取り戻せるように作られています。

学校という枠組みの外にも、世界はいくらでも広がっています。

焦らず、子どもの歩幅に合わせて、心のエネルギーが満ちてくるのをゆっくり待ってあげてください。

先生との相性や学校での安心感については、「先生との関係性と学びやすさ」でも詳しく整理しています。また、低学年の生活リズムと心の安定は「低学年の生活を整える研究」も参考になります。

参考にした研究・資料

・Kearney, C. A. (2008). School absenteeism and school refusal behavior in youth: a contemporary review. Clinical Psychology Review, 28(3), 451–471.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17720288/

・文部科学省「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422296_00005.htm