家族でトランプやボードゲームをしているとき、あるいは公園でかけっこをしたとき。

負けた瞬間、子どもが駒を投げ飛ばし、「もうやらない!」「ずるい!」と叫んで大泣きする。

せっかく楽しく遊んでいたはずなのに、一瞬で場が凍りついてしまう。

「たかがゲームでしょ!」「そんな態度なら二度と遊ばないよ!」と親もつい怒鳴ってしまう。

「こんなに負けず嫌いで大丈夫だろうか」「わがままな性格に育ってしまうのではないか」。

激しい癇癪を前にして、将来の社会性を不安に感じる保護者はとても多いです。

けれど、子どもの発達心理学から見ると、この激しい反応は「負けず嫌い」という性格の欠点ではなく、「情動調節(感情のコントロール力)」がまさに育ちつつある過渡期のサインなのです。

悔しさは「本気で挑戦した」証拠

まず大人が思い出したいのは、どうでもいいと思っていることでは、人は激しく悔しがらないということです。

負けて大泣きするのは、子どもがそれだけそのゲームに夢中になり、「勝ちたい」「うまくなりたい」と全力で心を傾けていた証拠です。

問題は「悔しさを感じること」そのものではなく、湧き上がった巨大な感情を脳がまだ処理しきれずにあふれ出してしまうこと(自己調整の未熟さ)にあります。

アイゼンバーグ(Nancy Eisenberg)らの情動調節に関する包括的な研究(2010年)でも、幼少期から学齢期にかけての子どもの感情のコントロール力は、前頭葉の発達とともに年単位でゆっくり育っていくことが示されています。

大人のように「まあ、ゲームだから仕方ない」と頭で感情を冷ますブレーキは、小学生の段階ではまだ工事中なのです。

「悔しかったね」と名札をつけてあげる

子どもが怒り狂っているとき、大人がやってしまいがちなのが「正論で説教すること」です。

「勝つこともあれば負けることもあるよ」

「怒っても結果は変わらないよ」

どれも正論ですが、感情が噴火している子どもの脳には1ミリも届きません。それどころか、「自分の気持ちを否定された」と感じて余計に暴れてしまいます。

ここで親ができる最も大切な支援は、感情を抑えつけることではなく、子どもの感情に言葉の名前をつけてあげること(ラベリング)です。

「勝ちたかったよね。ものすごく悔しかったね」。

ぎゅっと抱きしめたり、背中をさすりながら、その強烈な悔しさをそのまま言葉にしてあげる。

子どもは「親が自分の悔しさを分かってくれた」と感じたとき、初めて感情の波が引き始め、理性の脳が働き出します。

ゲームが始まる前の「小さな約束」

もう一つの有効な工夫は、勝負が始まる前に「負けたときのシミュレーション」をしておくことです。

気持ちが高ぶる前に、穏やかな空気の中で確認しておきます。

「ゲームだから、誰かが勝って誰かが負けるよ」

「もし負けて悔しくなったら、深呼吸を3回するか、お水を飲みにいこうね」

あらかじめ「悔しくなったときの逃げ道」を決めておくだけで、いざ負けたときに子どもがパニックを起こす確率を下げることができます。

家庭で持ちたい見方

  1. 負けて怒るのは、それだけ本気で取り組んだエネルギーの裏返しと捉える
  2. 怒っている最中に正論を言わず、「悔しかったね」と感情をまず受け止める
  3. ゲームが始まる前に「負けたときどうするか」をあらかじめ決めておく
  4. 大人がゲームで負けたときに、「あー悔しい!でも楽しかった!」とお手本を見せる

悔しさを感じられる子どもは、長い目で見ると、自分を高めていく強いエネルギーを持っています。

そのエネルギーを恥じたり否定したりせず、「悔しい気持ちとどう付き合って次に向かうか」を一緒に練習していくこと。

PikaLab のゲームやクイズツールでも、間違えたときに大げさなブザー音で責める演出は避けています。

「もう一回やってみよう」と自然に指が動くような、あたたかい手応えを大切にしています。

負ける経験は、決して楽しいものではありません。

けれど、その悔しさを乗り越えて「もう一回!」と言えたとき、子どもはまた一つ、強い心の土台を手に入れているのだと思います。

失敗から立ち直る力をどう育てるかについては、「失敗に強い子の育ち方」でも詳しく整理しています。また、遊びを通した学びの価値については「遊びはどこまで学びになるのか」も参考になります。

参考にした研究・資料

・Eisenberg, N., Spinrad, T. L., & Eggum, N. D. (2010). Emotion-related self-regulation and its relation to children's maladjustment. Annual Review of Clinical Psychology, 6, 495–525.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20192797/

・Gottman, J. M., Katz, L. F., & Hooven, C. (1996). Parental meta-emotion philosophy and the emotional life of families: Theoretical models and preliminary data. Journal of Family Psychology, 10(3), 243–268.
https://psycnet.apa.org/record/1996-06900-001